地域と育む『さがみこベリーガーデン』のブルーベリーに詰まったやさしい想い

地域と育む『さがみこベリーガーデン』のブルーベリーに詰まったやさしい想い

農産物と自然エネルギーを同時に生産する『ソーラーシェアリング』を相模原で初めて実現したブルーベリー農園をご存じですか?ここは最先端な取り組みが詰まったおもしろい“体験型農園”となっており、6月から8月末までブルーベリーの食べ放題も開催しているので、詳しくご紹介させていただきます!

のどかな山あいに近未来の農園現る!

やってきたのは、自然豊かな前戸地区。このまま進めば山中湖という道すがら、鮮やかな紫色の看板が見えてきます。

ここが今回ご紹介する『さがみこベリーガーデン』。看板からオシャレですよね?すでにただのブルーベリー農園ではないことが伝わってきます!

所在地:神奈川県相模原市緑区青野原329

看板の先に専用の駐車場があります。

駐車場の東にある一軒家の脇道を進みましょう。

しばらく進むと、光り輝く無数のソーラーパネルが見えてきます。

ブルーベリー食べホーダイ2024開催!

到着しました!詳しくは後述しますが、同農園は予約制となっているので、来園の際は必ずご予約が必要です。到着したら、看板の左側の方にある受付に行きましょう。

同農園は会員制体験農園で、株式会社さがみこファームが運営。現在、36品種1,100本のブルーベリーがあり、収穫時期に合わせて『ブルーベリー食べホーダイ』を開催。2024年は6/9~8/31まで開催しており、さまざまなブルーベリーを味わうことができます。

シーズン中は、ブルーベーリーの種類によって順次実っていきます。早い品種だと6月中に楽しめるのが10種類あったり、7月になるとまた違った15種類になったりと、訪れる時期によって異なる品種が楽しめるというわけです。写真は、6月に食べられる早生品種の中でも特に大きい、500玉サイズのユーリカという種類!

オプション体験&お土産もあって(別途有料)、スムージー作り、ブルーベリータルト作り、ブルーベーリーや生はちみつをお土産として持ち帰ることもできるのです。作ってもらうのではなく、自分で作って体験するものなので、より一層おいしく味わえそうですね!家族みんなで作って楽しむのも良さそう!

自然を満喫できる休憩スペースも

収穫したブルーベリーを味わったり、ゆっくり休憩できるスペースもあります。

このようにテントが張ってあるので、くつろげるようになっていますよ。お弁当を持ってくるのもOKです!

休日はたくさんの人が訪れるので、こちらの広い敷地にもテントが出てくるそう。木の下が特等席で、木陰で気持ち良く自然を楽しめるのだとか。

ソーラーシェアリングはブルーベリーと相性抜群

園長の山川勇一郎さんに案内をしていただきました!山川さんはもともと、東日本大震災の後に太陽光発電の事業を立ち上げた経緯もあり、ソーラーシェアリングというシステムにも精通していました。農業をするのは初めての試みでしたが、おいしいものを安定して育てられるように研究を重ねて今の形になっていったそうです。

ソーラーシェアリングとは?

農地にソーラーパネルを設置し、日射量を調整しながら農業を行い、太陽光で発電して売電までも行うという新しい取り組み。日本では4,000ヵ所ほどあるそうで、これによって農業+売電ができることで経営をサポートし、耕作放棄地と呼ばれる場所でどんどん普及しているのだとか。

同農園は、相模原市で初のソーラーシェアリングを実現。さらに設置を拡大していく計画もあり、今まさに話題の未来型体験農園なのである!

現在、6基のソーラーシェアリング発電所が稼働中で、年会員は個人会員300名、法人会員10社と、エネルギーや農業だけでなく、産官学連携といった複合展開も行っています。

ソーラーシェアリング発電所の1基

と…何やら「シュルシュル」と音を立てながら苗木に水がまかれ始めました。これは水と養分のお食事タイムで、今だと1日3回、夏だと1日6回と、自動で計画的に与えているのだそう。早く育ち、品質が高くなり、安定して収穫することができるのだとか。ポットの養液栽培というそうです。

ブルーベーリー畑はさらに拡張を予定しているので、その苗木が集中的にここで管理されているのです。

同農園では、土に植えるのではなく、植木鉢で育てているのが特徴的です。ブルーベリーは酸性の土壌が好きなので土壌によっては合わなかったり、地植えだと果実が安定的に採れだすまでに4年程度かかるそうですが、ポット養液栽培であれば早くて2年程度で収穫できるそうです。

中に入ってみると…「あれ、涼しい」。すごく快適です!暑い中だとせっかくの食べ放題も大変なので、このソーラーパネルが光を4割ほどカットする設計になっているというわけです。

ブルーベリーはもともとアラスカなどの寒いところで育った植物なので、多少日陰になっても育つそう。「光が無いと十分に育たないのでは?」という疑問もあるかと思いますが、日照時間は頭打ちがあるそうで問題無いのだとか。植木鉢だから動かして調整することもできるので、ソーラーシェアリングと相性が良いわけですね。

ちなみに。オレンジ色のネットが張ってありますが、これはヒヨドリ対策。一昨年は被害が無く油断していたところ去年は被害が出てしまったそうで…!(相模原らしくドローンで追い払うということも試したそうですが難しかったとのこと)
今年は万全の対策でのぞみますよ!

地域にとって欠かせない存在に

もともと「観光農園化したいという想いがあった」と、山川さんは言います。行政からは「パネル下では特定の農業者が営農」する旨の話がありましたが、それを会員制にすることで解決。地域にとっても不特定多数の人が一時にたくさん押し寄せるよりも会員制・予約制の方が安心、とのことで、事業に対する理解が得られるようになったそうです。

また、6基の内の2基では、まずハウスに引き込んで使用して余った電力を売るという、余剰売電にしています。これにより、自分たちで使う電動農機の電力もまかなえるというわけですね。農機具は一般的にガソリンを使う製品が多いそうですが、同農園では電動農機に統一することで、脱炭素化にも取り組んでいます。

もう一つの特徴としては、コーポレートPPAという制度があり、需要家と直接契約し、長期で固定価格で売電をしているのだそうです。これは以前、電気を買いたいという法人が出てきた際に、地域作りに「積極的に関わってもらいたい」と考え、ただ電気を売るだけではなく、農産物を買ってもらったり、福利厚生で遊びに来てもらったり、共同でイベントを行ったりと、法人会員の制度を作ったのだそう。

地震が起きて電気のラインが止まってしまった場合も、ここにコンセントを挿して電気が取れるようになるのだとか。この地域(前戸)の自治会と協定を結んでいて、非常時には電源ステーションとして開放されるというのも驚きです。台風19号で被害を受けた時の経験があり、また何か起こった時の対策も考えてられているのです。安心・安全に繋がる地域貢献にもなっているのですね。

そんな取り組みを知った地域の小中学校の校長先生から「ぜひ職場体験の受け入れをしてくれないか」という話があり、生徒たちが訪れるようになったそう。そこからブルーベリーを使った商品の開発なども始まっています。地元にこういった場所と取り組みがあると、なんだか誇りに思えますよね。

ちなみに、このソーラーパネルは、表面だけではなく裏面でも発電ができるもの。一昔前は高かったそうですが、今ではこれがスタンダードになってきているのだとか。

下の写真はパワーコンディショナーという、直流の電気を交流に変換する機器です。発電されたものが、ここを通して東京電力へと送電されていっているわけですね。

発電した電気は電柱の上の変圧器(筒状のもの)で圧力が高められて、電線で送電されていきます。電気は東京電力に20年間売電されるそうですが、一部の電気は法人会員である需要家に送られているそうです。

ブルーベリーに必須のミツバチ

ブルーベリーの花とか実って、まじまじ見ることって無いですよね?一個一個が花になっていて、受粉したのちに子房が果実になっていくわけですが、ハチが受粉したタイミングで熟れていくのでそれぞれ食べごろのタイミングが違うんです。なのでしっかり見て、濃い紫色になってて触るだけで落ちちゃうぐらいのを摘むのがポイントですよ!

撮影日:2024/5/14

ほとんどの果樹で実がなるためには、受粉が不可欠となっています。ブルーベリーも例外ではなく、そこで活躍するのがミツバチ。同農園でもミツバチを飼い、生はちみつとして会員に販売もしているのです。実は、ミツバチは減少傾向で、減ってしまうと果物が採れなくなって価格が上がるなど影響が出るので、そういった「社会問題を知ってもらうきっかけにもなれば」と、山川さん。

去年は100kgほどはちみつが採れたそうで、今年はもっと採れるのではないかとおっしゃっていました。ミツバチは箱の中に2万匹ぐらいいて、ぜんぶメスなんだとか。ミツバチはかわいいですし、見ているだけでも楽しいので観察してみてくださいね。

ワイン用のぶどうも育成中

他には、ワイン用ぶどうの試験栽培を2024年4月からスタートさせています。

ソーラーシェアリングで作っているところは少ないそうで、違う環境で育てたりしていろいろ実験をしているのだとか。近くの7,000平米ほどの農地にもソーラーシェアリングを増設して、ぶどうやキウイを作る計画も動いているそうで、ますます楽しい農園が広がっていきそうですね!

ブルーベリー食べホーダイの予約は?

午前の部(10:30~12:30)、午後の部(13:30~15:30)の、2時間制の『ブルーベリー食べホーダイ』に参加するためには、来園予約が必要です!公式サイトで、来園日、時間帯、人数等を選んでご予約を!オプションを頼みたい場合は当日でもOKですが、タルトのみ事前予約必須です。
来園予約 (さがみこベリーガーデン公式サイト)

鉢に貼ってあるのはブルーベリーの品種名。実はたくさんの品種があり、味も大きさもまったく違うのだとか!ぜんぜん知りませんでしたよね、これはちょっと食べ比べてみたくなってきませんか?

来園するなら年会員がお得!

会員制農園のため、当日会員か年会員になる必要があるんですが、お得に遊ぶなら年会員がおすすめ!Basic会員なら年会費2,000円(中学生以上※入園料本人無料)のみ。当日会員だと入園料2,500円(中学生以上)なので、1回でも来園するなら年会員になった方がお得なんです!

年会員は他にもいろいろ特典があるので、詳しくは公式サイトをチェック!
さがみこベリーガーデンの会員制度

地域が育むブルーベリー

ここはもともと篠竹が生い茂った耕作放棄地でした。農業だけで継続していくのがなかなか難しい時代の中で、売電することで安定した収入が生まれることで農業も活性化し、それが雇用に繋がり地域の持続性も高まるかもしれないと山川さんは考え、ソーラーシェアリングの導入を決めたのだとか。

相模原市では初の導入で、最初は行政も地域からも理解されることも難しく、実現まで2年かかったそうですが、今では畑を貸してくれるところも増えてきてさまざまな輪が広がっています。


ジャーニー編集長

畑を貸してくれた地域の方たちにすごく感謝をしていらっしゃっていて、「この地域があっての自分たち」だと山川さんは言います。ここが地域の発電所だと愛着を持ってくれたら嬉しいとも語っていました。

地域の想いが詰まったブルーベリー。ぜひ食べに行ってみてください!

さがみこベリーガーデン

※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。

住所
神奈川県相模原市緑区青野原329
アクセス
圏央相模原ICから車で15分
営業時間
10:30~15:30
定休日
来園予約が必要です
電話
050-3578-3356
Instagram
@sagamicofarm
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ジャーニー編集長

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八王子ジャーニーの編集長です!相模原ジャーニーでもちょいちょい顔を出してます!