相模原市は相模川や道志川、相模湖や津久井湖、宮ヶ瀬湖などを有する水の都市であり、良質の水が潤う『潤水都市さがみはら』をアピールしています。そんな相模原の地で江戸時代から続く蔵元『久保田酒造』は、まさに「酒は土地、酒は歴史」を体現しているといえるでしょう。そして同酒造では蔵見学が可能とのことで、お伺いさせていただきました。
自然豊かな場所にある久保田酒造
『久保田酒造』へは橋本駅北口よりバスで約30分。神奈川中央交通バス(神奈中バス)の橋03系統か橋07系統に乗り、『無料庵』停留所で下車します。停留所近くにある大きな看板が目印です。
車で行きたい方は駐車場も用意されています。ただし、酒蔵見学で試飲もしたい場合は、お酒を飲まずドライバーに徹してくれる方をお連れするか、バスで向かいましょう。
看板の案内通り歩いて3分ほどで到着。創業は弘化元年(1844年)、江戸幕府将軍徳川家慶の時代から続く酒蔵です。創業当初から丹沢山系の湧水を用いて、日本酒『相模灘』を造っています。酒蔵に併設されている直売所で購入することもできます。
所在地:神奈川県相模原市緑区根小屋702
蔵見学
蔵見学は予約制(500円。20歳未満は無料)です。見学の後には約10種類のお酒の試飲もできます。見学する日に納豆や柑橘類を食べてくるのはお酒に影響が出るため控えるなどの注意点がありますので、申込や詳細は久保田酒造 公式サイトでご確認ください。
今回は同酒造の代表であり、杜氏(トウジ)の久保田徹さんにご案内いただきました。杜氏は酒造りのリーダーです。
10月から3月末にかけての冬に仕込む寒造りで、伝統的な手法を用いて日本酒を造っています。生産量は300石(コク)。1石は180リットル程で、一升瓶換算では30,000本ほどとなります。大手ならば3万石も生産しているところがあるそうですが、同酒造はまさに、地元を中心に販売している小規模な酒造ということになります。
酒造りの工程は主に以下のとおり。
洗米、精米、蒸米、製麹、もろみ、上槽(しぼり)、濾過、貯蔵、びん詰です。
この釜場は、洗米、精米、蒸米を釜屋という立場の蔵人が担当するエリアです。シーズン中は毎日酒米を蒸していて、多いときには約500キロも蒸すのだそうです。
こちらの麹室は麹屋が米麹を造る場所。製麹(セイギク)という、お酒造りで1番大事な工程となります。酒造りの時期には、麹屋はここで2時間おきに夜中まで面倒をみるのだとか。
ここは醪(モロミ)屋がしきる、タンクに蒸米と米麹と酵母を投入し醗酵させ(醪)、絞ったりする仕込み蔵というところです。1トンのタンクが8本あり、通年で5℃に保たれるよう温度管理されています。ですので、夏の暑いなかでは涼しいけれど、冬場は逆にあたたかく感じる場所なんだそうです。
絞ったお酒を貯蔵して熟成させる貯蔵蔵。タンクは昭和初期から使われている貴重なもの。鉄のタンクをガラス繊維でコーティングした琺瑯(ホウロウ)タンクになっていて、蒸発しない、お酒に味がつかない、などのメリットがあります。大昔は木の樽で貯蔵してたので、1割くらいは蒸発し、木の味がついてしまうなど、なかなか味の違いを出しづらかったのだそう。
貯蔵蔵の2階を特別に見学
今回は特別に貯蔵蔵の2階へ上がらせてもらいました。ここから熟成具合をチェックしたり、かき混ぜたりするそうです。貯蔵蔵は創業当時から変わらず同じ場所とのことで、補修して使い続けているそうです。ちなみに、柱が黒くなっているのは防腐効果のある柿渋を塗っているためだとか。
さらに、現在熟成中の梅酒を見せてもらいました。こちらの梅酒は『相模女子大』とのコラボレーション梅酒『翠想』。相模女子大構内でとれた梅をつかって漬けているもの。梅のとても爽やかな香りが広がり、2ヵ月ほど熟成させます。『翠想』は9月にさがみはらアンテナショップ『sagamix(相模原市観光協会)』にて販売されるのですが、毎年売切必須の人気商品だそうです。現在はほかにも9月に向けて『秋あがり』(冷やおろし)が熟成中です。ちなみに、10月からの蔵人も募集しているとのこと。気になるかたはお問い合わせしてみましょう。
相模灘を試飲
相模原の地酒『相模灘』。定期的に町田駅や橋本駅で試飲、販売をしているので、目にされたことがある人も多いのではないでしょうか。
『相模灘』は、基本に忠実な吟醸造り、吟醸香は穏やかに自然に香る、あくまで米の旨味を生かしたバランスの良い食事中に飲む日本酒です。基本の飲口は、やや辛口に分類されていますが、もう少し発酵させた辛口もあります。ほかには酒粕を使った焼酎、『相模灘』で漬けた梅酒も販売されています。
さて、待ちに待った試飲です。試飲では約10種類のお酒を用意してくれるとのことで、今回用意していただいたのはこちらの10本!心おきなく飲み比べを楽しんじゃいましょう!
酒米の違いを楽しめる
左から『純米吟醸美山錦』は上品で口当たりのよい長野産美山錦(ミヤマニシキ)を酒米に使用。
『純米吟醸雄町』の酒米は醪とよく溶けあって膨らみのある岡山産雄町(オマチ)。
『純米吟醸山田錦』は、上記2種類のよいところをあわせたような、米のうまみを感じさせながらキレのある兵庫産山田錦(ヤマダニシキ)を酒米に使用しています。
同じ相模灘でも酒米の違いを比べられ、自分好みのタイプを選ぶいい機会です。ちなみに筆者は山田錦の「飲みやすさ」が一番好みでした。
一番右の『純米吟醸雄町(無濾過生酒)』は、純米吟醸雄町の無濾過生酒です。こちらは火入れをしてないため、酵母の生きたフレッシュな味わい。
こちらは左から『特別純米辛口』『特別純米辛口(無濾過生酒)』『純米大吟醸』です。キリリと舌をさす辛口。そしてその原酒になる無濾過生酒。米をより削って雑味をなくした純米大吟醸は、よりクリアなお米のうまみを楽しめました!
こちらは左から酒粕を使った焼酎『粕取り焼酎』。ほのかに残る酒粕の味が面白い1本。さらにその『粕取り焼酎』を洋酒樽で7年以上寝かした熟成酒『粕取り焼酎秘蔵酒』は、まろやかに熟成されていて、まるでウイスキーのような樽の風味香るおいしさでした。最後に口にした『純米仕込梅酒』は、梅酒専用の『相模灘』で漬けられているそうで、甘味と酸味が絶妙なバランス。問答無用でおいしいです!
久保田酒造 直売所
同酒造の直売所ではお酒はもちろん、お酒に関連したいろいろなものを購入することができます。
おちょこやぐい呑み。
こちらは熟成粕。
手作り麻袋やおつまみ。『相模灘』のTシャツも売られています。
さらに、夏にむけて『熟成粕ジェラート』400円(税込)を販売しています。正直おっかなびっくり食べましたが、これがとてもおいしい!甘酒とミルクアイスがバランスよく融合した味です。個人的には少し溶かしてから食べると、よりお酒の味を楽しめると感じました。
見学をおえて
いかがでしたでしょうか。今回の記事をきっかけに、蔵まで足を運んでいただいたり、酒屋や飲食店で『相模灘』を手にとっていただけたら嬉しいです。いろいろな種類がありますので、好みの日本酒がきっと見つかるはず。造り手の熱意を感じられると、一層おいしく楽しんでいただけるのではないでしょうか。
今年7月で創業180年、会社設立から100年の節目を迎えた『久保田酒造』は、各企業とのコラボや新商品の発表など、伝統を活かしつつ活動に新たな息吹を感じます。相模原にこんな酒造があるとは、とても誇らしいですね!
いろいろ知れて、今夜の晩酌も楽しみです。一口一口に想いをはせながら、お酒をいただこうと思います。
『相模灘』は食中酒なので、いろいろなつまみにあわせて楽しみたいですね!みなさんもよい晩酌を楽しんでください!
久保田酒造
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。
- 住所
- 神奈川県相模原市緑区根小屋702
- アクセス
- 神奈川中央交通バス 無料庵停留所 徒歩3分
- 営業時間
- 10:00〜17:00
- 電話
- 042-784-0045
- @Iso1227Kanabun
- @sagaminada_kubotashuzo
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