
地元の方から信頼され譲り受けた茅葺き古民家を、職人とともに丁寧に再生した『懐石料理 寿麹庵JYUKOUAN』。この古民家に魅了された料理長との出会いが、お店の始まりでした。地元食材を活かす料理や、女将によるプロデュース、オーナーの母による陶芸や絵が調和し、伝統と想いが息づく空間に。ここで味わえる料理は、まさに一期一会の体験です。
アクセス
相模湖駅から車で10分ほどの場所にあります。駐車場は建物のすぐそばではなく、一段下の道沿いにあるため、初めて訪れる方はご注意を。

所在地:神奈川県相模原市緑区千木良533
店内は暖かくて木のぬくもりが感じられる和の内装
店内は木のぬくもりにあふれ、和の落ち着いた空間が広がっています。レストランウェディングでは45名での開催実績があり、通常は30名ほどが入店可能。駐車場からは階段を通るため、足の不自由な方は事前に問い合わせておくのがおすすめです。

2階席では、茅葺き屋根の裏側を間近に感じられ、12名ほどでの貸切も可能。まるで隠れ家のような、非日常感を味わえる空間です。

階段から見えるステンドグラスは、オーナーの手作り。柔らかな光を取り込みながら、楽しみながら少しずつリノベーションしてきた過程が感じられます。

季節の絵
店内に飾られているのは、オーナーのお母様が描いた季節の絵。時々女将がその季節に合わせて掛け替えており、空間の雰囲気とも絶妙に調和しています。

メニュー
※取材時は春のコースとなります。季節により料理の内容は変わります。
今回は昼食限定の『竹懐石コース』7,000円(税込)を注文しました。

訪れるたびに内容が変わるのも魅力の『弥生の竹懐石コース』(ランチ限定・税込7,000円)。旬の食材を使うため、毎回異なる献立が楽しめます。写真は一例です。

先附け よもぎ胡麻豆腐
地元産のヨモギを練り込んだごま豆腐に、新鮮なウニをトッピング。なめらかでもっちりとした食感とウニの風味が絶妙に調和します。

前菜
色とりどりに並ぶ前菜の一品一品に春の息吹が宿ります。内容は以下の通りです。
- ・鮑と煮豆
- ・蛍烏賊の酢味噌掛け
- ・菜の花の胡麻和え
- ・白魚の香梅揚げ
- ・からすみ大根
- ・天むす稲荷寿司
どれも丁寧な仕事が施され、素材の魅力を引き出しています。見た目にも美しく、季節感あふれる前菜でした。

お椀盛
お写真のお椀は、帆立真丈の清汁仕立て。添えられた梅人参、芽蕪 (めかぶら)、柚子がやさしい彩りと香りを添えています。上品な出汁の香りがふわっと広がり、口に含むたびに素材の旨味がじんわりと感じられました。

お造り 本日の魚河岸より
本日の鮮魚は以下の通りです。
- ・本マグロ
- ・カンパチ
- ・平貝
- ・赤貝
- ・甘海老
山あいの立地ながら、どれも驚くほど新鮮。付け合わせには、大根つま、大葉、針南瓜、ムラメ、花穂、山葵が添えられており、繊細な演出とともにお刺身の魅力を引き立てていました。

焼物 川鱒の木ノ芽焼き
タケノコ、川鱒、イクラの色合いが目にも楽しく、味のバランスと食感も秀逸。箸にのせた姿も美しく、丁寧な仕事が光ります。


御飯と留椀
ふっくらとしたご飯にうなぎがのり、ひじきの風味が広がります。香の物も品よく、留椀は赤だしに生海苔、彩り豊かな麩が加わり、食事をやさしく締めくくります。

甘味 島村ファームの積み立て苺ゴルゴンゾーラジェラート
冷たくなめらかなゴルゴンゾーラジェラートと、甘酸っぱいイチゴのハーモニーが絶妙です。使用されている苺は、神奈川県相模原市緑区川尻にある観光農園・島村ファームのもの。真っ赤に熟してから摘み取るという、贅沢な地元食材をふんだんに使用した至福のデザートです。

料理長 小林正明さん
料理長を務める小林正明さんは、かつてインド・ムンバイの『タージ・マハル・パレス・ホテル』内にある、森本正治シェフ監修の日本料理レストランで活躍されていた方。レビューには『Interact with our Japanese Chef Masasan Kobayashi at the Sushi Bar』との記載も。森本シェフのレシピを再現する現地の料理長として指揮を執っていたようです。
さらに、京都の老舗料亭で10年、東京の名店でも腕を磨いた実力派。コロナ禍を機に帰国され、この古民家に惹かれて料理長として参画されたとのこと。世界の舞台から地元へ戻り、地域食材を活かす料理を日々提供されています。

佐野川茶と地域とのつながり
佐野川茶は、神奈川県相模原市緑区佐野川地区で生産される特産茶。陣馬山麓の霧深い高地で育まれ、渋みが少なく、甘みと香りが際立ちます。茶草場農法(ススキや笹を刈って茶畑に投入する循環型農法)も取り入れられ、持続可能な取り組みとしても注目されています。
1960年代に国の山村振興策として始まり、最盛期の1983年には130名以上の生産者がいましたが、2015年に組合は解散。その後、地域の努力によって2018年に相模原ブランド茶として復活し、今も大切に受け継がれています。

最初の取材時に提供いただいた佐野川茶は、香り高く、ほんのりとした甘みがあり、どこか台湾春茶を思わせる味わい。時々女将がブランドのプロデュースにも関わっており、この地域の魅力をさらに引き出していくような発信が期待されます。

寿麹庵のパッケージで販売されている佐野川茶は、お土産にもぴったり。店名の『麹』には「体にいいものを届けたい」というオーナーの願いが込められているそう。洗練されたデザインと相まって、海外の方への贈り物としても最適です。


私もいつか、こんな茅葺き屋根の家に住みたい。地産地消のおいしい料理をいただき、森の中を散歩し、美術や音楽に囲まれて暮らす——そんな夢を見せてくれるようなランチタイムでした。
古民家の美しさを残しながら、地元食材の魅力を引き出していく『寿麹庵』。これからもこの場所から生まれるオリジナルの味や文化を楽しみにしています。
寿麹庵(じゅこうあん)
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。
- 住所
- 神奈川県相模原市緑区千木良533
- アクセス
- 相模湖駅 車8分
- 営業時間
- ランチ:11:00〜15:00 LO14:30
ディナー:17:00〜22:00 LO21:30 - 定休日
- 火曜日
- 電話
- 042-649-0608
- Webサイト
- https://jyukouann.foodre.jp/
- @ jyukouan
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